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オンラインショップ3周年限定手ぬぐい誕生のお話

染工場ナカニの職人さんは、お客様の依頼を受け、注染でできる限りのご希望に沿うように染めるのが通常のお仕事です。
『こんなんしたいな』『あんなのしたらどうなるかな』といった想いを反映するということは、ほとんどありません。
しかしにじゆらは、デザインの方向性が大方決まると職人さんに相談をし、レイアウトや色の相談をしながら作りあげていきます。
それが私たちの魅力の一つで、現場との距離がとても近い。他の手ぬぐい屋さんではあまり見かけない光景です。
その中でもオンラインショップ限定柄はさらに掘り下げ、職人さんたちの「染めたいものをデザインする」というコンセプトのもとに手ぬぐいができあがる企画です。

今回の3周年記念手ぬぐいを一緒に作ったのは、にじゆらの染め型を製作する型職人。
デザイナーでもありオンライン業務もおこなうマルチな職人さんです。

まずは、どんなものがいっかとアレコレ話すところから始まりました。
「ロマンチックで可愛い感じ」「型紙をスーッと剥がすのが気持ちいい」「レトロな喫茶店やマッチ箱が好き」
話し合う中、この3つのキーワードから新しい手ぬぐいの素材が決まりました。

それは、純喫茶にあるような椅子へと構想が結びついていきます。
椅子の背もたれが1本のラインでつながったモチーフを中心に、喫茶店にまつわるメニューや装飾を足したデザインの方向性で決まりました。
図案をイメージする指示書を作ったら、いつもだと絵柄タッチの方向性で作画担当を決めますが、今回は型職人兼任のデザイナーさんに担当してもらうことにしました。

注染をデザインする時にはいくつか制約があります。
染色する部分としない部分の距離感、染色する部分の線の細さ、染めない部分の細さ、色が混じり合う場合の色合いの組み合わせ、そして、現場の生産作業性があがるようなデザインや色数など…
また、基本的に色と色を隣合わせて色分けをすることはできず、色を差し分けたい時は1cm以上の間隔があったほうが染め分けがきれいにあがる確率が高くなります。
*2度染め(細川染め)と呼ばれる技法は異なります。
今回の手ぬぐいは間隔1cm以下のところもあり難易度が高めで、壺人職人の腕にかかってます。

デザインを赴くままに描いても注染で表現するためには、どこをどのようしてバランスをとるか、理想とする手ぬぐいと現場で可能な染色との狭間でいい塩梅を模索しながら進めていきます。

私たちは、描いては調整し企画や現場確認などを何度もおこない、型が作れるデータへと完成させていきます。
デザインが決定したら、ここからはデザイナーから型職人へ早変わり。
まずはデータを入稿し、図案の中で染めない部分となる紙を剥すため専用ソフトを使ってカットラインを追加していきます。

カットラインが出来上がったら機械でカットをしていきます。
それから紗張りされた型紙の保護フィルムを丁寧に剥がし、ここからが今回の「型紙をスーッと剥がすのが気持ちいい」作業の始まりです。

ここで気をつけないといけないのは…
注染の型は
・染色する部分の絵柄を残す
・染色しない(防染糊)部分を剥がして、紗の部分をだす
ことです。

今回の図案は、細かいモチーフもたくさんあります。間違えて取れてしまわないように、慎重に作業を進めていきます。
型職人を本格的にはじめて、まだ1年弱の若手ですが今では、型の修理もこなし、大いに頼りになる職人です。

剥がす作業は時間との闘いでもあります。
紗張りをしてからあまりに時間がたってしまうと、塗料が固まり型紙が剥がしにくくなってくるのです。

さて、型が完成しました。
ここからは、注染の現場の職人さんにお任せです。
出来上がった型紙を木枠にはめて、糊置きが始まっていきます。

「純喫茶」見事きれいに染まりました。
いつもは染めの現場をお伝えすることが多いのですが、このように私たちの工場はデザイン構想から既にものづくりが始まっています。
そして今回のように型をつくる職人も在籍し、わたしたちの注染手ぬぐいは出来上がっていきます。

オンラインショップの新柄「純喫茶」は、こっくりとしたマルチカラータイプと、特別限定色として、イラストの良さを引きたてるようなそして喫茶店の椅子にあるベロアのような上品なえんじ色とを作りました。
*限定色は、初回生産分で終了となります。

新しく仲間入りした手ぬぐいも使って愛でて、ご自身のアジに育ててください。